「その海から」(61〜70)/たもつ
61
窓口で明日のことを聞く
明後日のことはわからないと言う
犬の尻尾を握ったまま
数日が過ぎた
公印の刷り込まれた
きれいな色の証明書が届く
62
受話器を取ると
波音が聞こえる
海は何を伝えたかったのだろう
その海では
伝えたくないことばかり
生まれてくるというのに
でも僕は
ソファに広がっている
63
室長にひびがはいる
スペイン語で書かれた懸案事項は
昔からずっと
偽物のまま
分断して
蒸気船が入港する
64
駅名の無い駅で
ベンチに座り
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