ペンギンの光/楽恵
から滴る水が、他人の靴を水浸しにすることさえ忘れるくらい、
遠い国の災害や戦争よりも、光る皇帝ペンギンのことが心配だ。
そのビルの近くに寄って見上げると、光る皇帝ペンギンは意外と見えにくい。
電車に乗って遠くから眺める方が、ペンギンの光る様子はよくわかる。
朝、家から会社に出勤するときは
光る皇帝ペンギンのことなんてほとんど忘れているのに、
昼休みにお弁当を買いに行くときはまったく忘れているのに、
日が暮れて帰宅時間になると
私はいつも電車の窓越しやプラットホームから、
光る皇帝ペンギンを高層ビルの屋上に発見する。
そしてあの光る皇帝ペンギンを見つけたとき、
私の胸の心臓も、同じように少しだけ光るのだ。
戻る 編 削 Point(14)