Eyre/月乃助
灰色の壁にかこまれ
孤児院で八年を過ごしました
柔らかな母親の胸に抱かれた記憶もなく
暖かな暖炉の炎を見ることもなかった
人に愛されることも
家族の意味も分からず
親友を病気で亡くしてからは
いつも一人でいました
(そこでは、たくさんの子どもたちが、劣悪な状況に病気になって
短い命を終えていました)
人を愛するすべも知らず
薄い毛布にくるまって眠った夜
ただ、ここを抜け出すそれだけを考えたのです
夢でも希望でもない 願いとして
頼る何ものもなかった 自分以外は、だから
自分を支えながら ただ それを苦労とも思わずに
そんな道を歩いてきたのです
学ぶことは許され
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