水を渡る/石瀬琳々
 
波を立てながら彼方へ
歌をくちずさみながらまだ見ぬ彼方へ
手をのべるとあなたの呼ぶ声になる


わたしはわたしの声を知らない


   わたしはあなた


   *


耳を澄ませている
名もない心を抱いたまま
わたしもいつか風になってゆこう


透明な飛沫を上げながら
軽やかな足どりで 振り返りもせず
(きっと夢の中のように)


わたしは歩いてゆく
歩いてゆく



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