水を渡る/石瀬琳々
 
手をのばせばつかめそうで
指のあいだからこぼれ落ちてゆくもの
きらきらと きらきらと
それは光っている 踊っている


   *


春の訪れ、光まぶしいこの水辺
まだ若い水草がさやさやと絡みつく
むきだしの脛まで冷たい水に浸りながら
わたしは歩いてゆく 風の方角へと


あなたはまるで切っても切れない絆のよう
水面を覗くと微笑みが見える
わたしをすべて見通すあの瞳で
そうしてあなたの中にわたしを見るだろう


わたしはわたしをそっと抱きしめる


   あなたはわたし


   *


水の上を名もない風が渡ってゆく
かすかなさざ波を
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