冬と名/木立 悟
 






見えない冷たさ
夜の手のひら
わたしわたされ
ひらめく見えなさ


指に映る指の影
花でくるみ ひとつ剥がし
鳴る夜の外
夜の外


やわらかな針
風になびき
やわらかな痛み
傷つなぐ影


まるく硬い端
囲むものが 常に夜となる線
原は原として熱を放つ
街が街でいるあいだだけは


冬のひとりを霞ませて
両目をおおう手のひらの
はざまの虹を去ってゆくもの
見えない縦の 緑 ささやき


手わたすときに熱く熱く
手わたされるときさらに熱く
海を見おろし
途切れる道


光のかかととつまさきが
前にうしろに埃を昇る
生まれ得ぬ子の
名を降らせながら


透明の前をゆく冬に
残り香を抄う指を轢かれる
原の果ての原 錆びた階段
蛇のように血と霧を見る
























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