『解熱剤』/東雲 李葉
朝起きて呼吸のしづらさに違和感を覚える
出した声は絞め殺された鶏のようで
ああ、やっちまったな。と生温いため息
体はだるいが腹は減る。ここら辺が痩せない理由か
冷蔵庫の中には麦茶と酒とつまみと菓子と
叱ってくれる人もいないからいつまでもぐうたらしたまま
自分に依るって簡単なようで難しい
カレーが食べたい。
シチューが食べたい。
すき焼きが食べたい。
おかゆが食べたい。
体が熱くて軽くて重い。誰かと話したいが声が出ない
今日に限って低い天井がずっと遠くて
起き上がるのも面倒だ。誰もこの手を掴んじゃくれない
懐かしい日を思い出す。れんらく帳も一人で受け取った
もう居留守を使う相手もいない
台所からは音もしない
薬だけだと胃が荒れるのは三年前に知ったことだ
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