#13/山口清徳
 
赤い塗り絵の重圧を感じる革張りのソファの硬さに比肩する
未だ消えず手に残る、万力の無慈悲な感触の記憶
事あるごとに呼び出されるそれらにより
サイバネティックの壁画はものの見事に完成された

凝固しかけた血のような洞窟に沈んで行き、また這い上がり
過去を呼び覚ますように行きつ戻りつ

焼印の焦げる匂いが辺りに満ちて、また再び沈んで行く
それはどうしようもない喩え話にも似て、
心なしか解放の響きを湛えた思いがけない仕草

ひどく疲れた顔をして、可哀相に
こっちにおいで、手の鳴る方へ
迷路の果てには何がある?
逃げ出してもほどけない、融け出す満ち潮に飲まれれば

そこからでは届かない合図の意味は受け止めかねて、深い深い森の中。
甘い芳香に匂かされ幾重にも重ねて、深い深い夢の中。


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