走馬灯の夢 /服部 剛
 
塀の上で危なっかしく
好奇心の瞳で這っていた 
三才の私 

新しい家の
まっさらな床を両手で撫でた 
五才の私 

学校という未知の国へ 
鼓動を、高鳴らせていた 
7才の私 

教室で手を繋ぐ輪の中で 
ひとつの灯りとなっていた 
十二才の私 


愛の手紙は破れる、と知った 
十七才の私 

現実の壁の前に、膝を落とした 
二十六才の私 


三十五才の私は、今 
誰一人いない、十字路に立ち 
じっと、明日の風向きを、睨んでいる。 

五十才の私は、やがて 
肩に喰い込む、十字架の重さを知り 

七十才の私は、いつか 
かけがえ
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