人間のかたち/岡部淳太郎
とだ
こんなふうに
手足が生えそろって
りっぱに人間の
かたちを成しているのに
しばしばそのかたちを
保てずにどろどろに
溶解してしまうような
気分におちいることがあるのも
不思議なことだ
たとえば
私たちは
石のように記憶だけを
凝固した存在に
なることもできたかもしれないのに
こんなふうに
人間としての
かたちを無意識のうちにも
成そうとしてしまうのは
不思議なことだ
それがたとえ
空からの命題であったとしても
私たちはいつもどおり変らずに人間の
かたちへとばらばらに集合する
不思議なことに
そうすることで私たちは
安心し
また次の人間の
かたちへと焦って
不安になるのだ
(二〇一〇年二月)
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