漣/あおば
 
もなくアノードに到達してしまう
光速とか電波とか高級な意識とは無縁に
整流回路で漣を立てている直熱型整流管12Bは理論を忘れて227のアノードに電流を供給するのに忙しい

227が作動して
電波に乗った音声が耳に聞こえる低周波となり
出力型三極真空管12Aを駆動して
マグネチックスピーカーを
うるさいくらいに鳴らす
下手な歌手が歌っているのかと思ったら
そうでもなくて
大きい音が
それだけで価値があると信じられていた時代の設計方針のようでしたので
少しうるさく耳障りな
漣のようにブーンと鳴り続けるハム音が
並四ラジオの鼓動のようで
聞こえている間は安心できると
貧弱な整流回路を
今様に改善するのは止めようと思う





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、小川 葉さん。

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