上空で/番田
車窓で見つめていた
航空券を 指先に握りしめた
地球の歩き方の端の メモ書きに
茅場町の景色を浮かべている 林課長の
あとがまの立場ではなくなっていく エクセルの表に
ノルマ達成を凝視していた
吐き気すらしていた 夜の電車だった
部下は 目まぐるしく忠誠を忘れ
市場は値引き合戦に狂っている
暗闇の映写機には
死体のような 人間の死臭が漂っていた
サーベルの持ち手に 血糊がついていた
俺は ユーラシアのどこかに浮かぶのだと
モニタの中の飛行機は 緑の草原の中であり
モスグリーンの杉たちが ゆがんでいた
月の輪熊がうろつき エスキモーの服が歩いていく
飢えし者の生命の営みが浮かんだ
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