ノート(指の季)/木立 悟
 


何のために拓かれたのか
忘れ去られ 荒れ果てた地に
静かに触れるふたつの指



空き地から空き地へ
ざわめきを越え
かがやく差異の曇がひろがる



空にも地にも
遠く 近く
小石の宇宙を呼びつづける指



海に降る雨
午後の陽の雨
鼓動のなかを走り去る雨



はねかえり はねかえり
道と同じ大きさと長さに
水たまりの光はつづいてゆく



灯りの滴
空き地の滴
飛沫の音から生まれる霧



町を映す流れの上に
何度も紋を描く指
光を荒れ地に傾けてゆく



夕暮れから夕暮れまで
水と人の軌跡を結び
つややかに舞うふたつの指





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