ウミネコの部屋/月乃助
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眠っているあなたに ささやきかける
海峡の海鳴りがきっと
霧のような不確かな、消え入りそうな言葉を運んでくる
小さな螺旋の都に吸い込まれるように
淵をなくした深淵へと
言葉などにしたこともない想いを、
消し去りながら
美しい季節から 剥がし取った
寝顔の稜線は、やさしく姿を変えぬまま
僕を忘れさせたりしない、そのために僕はここにいる
二人寄り添う支点から 言葉は生まれ静かに語られる
海を過ぎる貨物船のゆっくりとした動きほどに
光りの線をなぞりながら どこまでも
触れればやってくる愉楽に
今はただ 髪を少しばかりかき上げて
眠る人は、ただ、深遠を
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