#8/山口清徳
 
ほのかに帯びる熱にうかされ、紅らんだ肌の火照り鎮め
理性の届かぬ翻弄の垣根越え剥ぎ取る、姿のない子供じみた戯れの跡
衝動、かすかにほのめかす束縛の絆
融け出す理知の顔はぬかるんだ水となって溢れ出し、
伴う鼓動の高まりだけが全てを支配した。

満たす体温のもつれ合い、絡み合う懊悩の秤には
ただひた隠す傷を舐め合う記憶と再現、取り戻す行方知らずの生存欲求
突き動かされるだけの即興的児戯にも似た、横顔のない鏡写し己の身。

困窮する思考停止の末、浮かぶ灯火の熱に焦げた憧憬の顕在化に
測りかねて試す試行錯誤の触れ合う手と手の隙間に垣間見える
行為の傷跡、濡れた情動、揺れ動く度に漏れる真実の姿。
されど言葉塞ぐ相対の舌触り、酔いしれる体温の上昇とともに
急速に醒める本能と仮面、高揚と安穏がせめぎ合う事を同時に意味している
それと知られぬよう、朝が目覚めを告げるまでは。



(情交の断片) 
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