生きたいんだ/七尾きよし
 
助けてくれ!」という叫び声が人間が人間たる証なんだ。
人間と人間の間に広がる断絶は何を投げ込もうとも埋まりようがなく、底ではなく側壁にぶつかった音を聞いてぬか喜びするだけ。
絶望とは探すべきものではなくて、もうそこにあるんだ。
人間が人間となった瞬間から、人間を貫くものとして。
絶望を見ようとせぬぼくらはあきらめることなく道を求めることで迷い続け流転する。
どんな道を求めるかは縁次第で、聞くべきなのは、「助けてくれ!」って叫び声なんだ。人間の人間たる証なんだ。業縁によっていかようにも振り回されて生死する人間。そのすがたになむあみだぶつの声を聞け。どう歩むかじゃないんだ。求めてやまないものが手に入るかどうかじゃないんだ。本当の願いは願いが願いとして成就していくような願いなんだ。その願いによってぼくらの「助けてくれ!」って叫び声が見出されるんだ。人間に、迷いに帰れって。
ただ南無阿彌陀仏なんだ。
本当のことはわからないけど、
ぼくはそんな風に思うんだ。
だからただ南無阿彌陀仏って称えて生きたいんだ。

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