深海魚(グロテスク)/甘雨
、を閉じ込めた包み紙がべたべたする悪夢に)
(だれも触れたがりはしない)
(錘もなしに深海へと沈んだわたしを褒めてください)
ふしだらなかなしみと
はてのない欲望のあいだにうまれたわたしにできること
明滅する鱗のすべての孤独を舐めとれ
砕かれてゆくアバラの悲愴の爆音に狂え
眼球の抉りとられる快楽になのりをあげろ
白化した珊瑚のさいごの吐息を綴れ
とどかぬ光の妄想でマスターベーションをしろ
そうしてくりかえされる
欲望による欲望のための欲望の生成
欲望のべたつく尾ひれをひいた
わたしは、深海魚
さいごに白を描いたのは
ホワイトアウトしてゆく自我のさいごの軋みのような
祈り、であって
欲深いかなしみの果ての静寂を美化するため、
ではなかった
(グロテスクより美しい真実はこの世にはない)
(グロテスクよりかなしい真実はこの世にはない)
そうしてくりかえされる
ふしだらなかなしみと
はてのない欲望のあいだにうみおとされた
わたしは、深海魚
-第五回「文芸思潮」現代詩賞奨励賞-
戻る 編 削 Point(2)