ぷるぷる/なき
 
窓の内側で腰掛けている
表面張力が健気に見える雨の夕方
君に意味もなく電話をかけようかどうか迷う時と似ている
零れそうに張り詰めたコップと水の縁を
楊枝の先でつつく
君の声を聞いても
格別に安心を得られるわけじゃないと理解した時と似ている
健気な表面張力が水の存在を守るように
ぷるぷる揺れる
君の声を吸い込んで
染み込むように控えめな戸惑いを覚えた時と似ている
ため息に撫でられた健気さが存在を主張するように
ぷるぷる揺れる


窓の外側で傘をさしている
やわらかな霧雨と並んで風に流されながら
手のひらを前に差し出す
水分で満たされた空気に満たされた肺
広げた傘から雫が落ちて
表面張力はどこまでも健気にぷるぷる震える
健気さが意固持に見える理由がわからないまま
差し出した手のひらを口実にして
霧雨を全身で吸い込む


表面張力が健気に見える雨の夕方
健気さが意固持に見える理由がわからないまま
君に電話をかけようかどうか迷いながら
差し出した手のひらの表面から
ぷるぷる震えていく



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