沁みていく春/あぐり
 
2010年
わたしの21回目の春で
年が明けてからどうにか
一粒の睡眠薬と二粒の精神安定剤を飲まないままに
すこしずつ
からだのなかに春が沁みていく

2010年
きみに出逢ってから八回目の春で
でもやっぱり
きみと過ごす最初の春で
12歳できみを見たときよりふかくふかく
きみを愛しているよと
すこしずつ
きみのなかに春を沁ませていく

2010年
声を取り戻してから七回目の春で
大事なことをちゃんと言おう
声はとても怖いものだけど
それでもとても愛おしいものだと
自分の声を少しは好きになれる気がしてる
すこしずつ
声のなかにひだまりを沁ませていく

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