漣/小川 葉
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夢から覚めると
仕事にいかなければならない
わたしが生きるために
妻とこの子が生きるために
けれど
夢ばかり見てしまう
夢を持てと
先生は言ったけれど
わたしは夢を
見ることしかできない
マンションが欲しい
空から見おろす
街の夜景は綺麗だろうな
夜景のどこかに
わたしの借家がある
わたしの、ではないけれど
息子がこの家を
故郷と思って懐かしむ
そんな日がいつか来るだろう
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わたしがいつか
おばさんになっても
という歌があった
まさか
そんなことが
あの頃は思っていたけれど
おばさんになっていた
妻を愛してる
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死にゆくわたしは
言葉などいらない
愛という
簡単な言葉から
漣に消えていく
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