魂風船/敬語
らせたのか、僕の魂は唐突に話し始めた。
声帯も口もない魂なのにも関わらず。
「久しぶりのシャバだから、ちょっと世界の変化を見に行こうとしただけだよ。また、その体の中に戻る前にさ」
それを聞いた僕は安心した。
また僕の体に戻ってくるなら心配はない。
だったらと思い、快く送り出してやることにした。またには魂だって息抜きも必要な訳だし。
「なら、僕は止めないよ。いってらっしゃい。楽しんでおいで」
了解の証か、一度上下に大きく揺れてから、再び風船となった僕の魂はぐんぐんと上昇していく。
しかし、数メートルくらい進んだところで一旦急停止し、僕の方を振り向き、ぼそっと呟いた。
「ところで、魂はこっちにあるというのに体が動いているのは何故なんだろうね。まぁ、いいけど」
そして、今度こそは雲を通り過ぎ、姿が見えなくなるくらい高くへ行ってしまった。
その様子を笑顔で見ていた僕は、先程の魂に負けないくらいの小声でぼそっと呟き返した。
「確かにそれもそうだね。よし、君が戻ってくるまで考えてみるとしよう」
戻る 編 削 Point(1)