冬と辺/木立 悟
 






冬を鏡に鎮めながら
ひとつの影がすぎてゆく
向こう岸の曇
波に消える道


足の痛み
汽笛 光
はらわたの音
はらわたの夜


風は足りて
水は足りない
曇は迷う
鉄柵の森


折りたたまれた祈りの紙に
幾つかの欲は静かに眠り
羽は夜のあいだじゅう
眠らぬものにささやいている


大きな水が曲がりゆくとき
光をひとつ残してゆく
昼はいつもそれを見ていた
夜はそれを朝にわたした


緑の壁の赤い虫
まぶしすぎて進めない径
あれら一瞬の一生を
羽の時間は梳いてゆく


海へ到らぬ川の声
青に消え 青に降り
青の青の青に散り
すべての岸へたどり着く


影は癒えぬまま燃えるまま
標のように在りつづけ
水は曲がり 光を残し
朝はひとつを ひとつに抱く



















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