死にも詩にもならなかった断片二つ/佐々宝砂
 
トから水色の切符を引っぱり出す
行き先は「→いやになるまで西」途中下車無効

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私たちは死ぬだろう
荒々しくも豊かな海に飲まれて
猛々しくも包容力ある雪に埋もれて
いやそんな美しい死は
もう私たちのものでない
でも私たちは死ぬだろう
突然の爆発に手足を千切られ血を噴き出して
悪意の閃光に灼かれて崩れて
いやそんな弾けるような死さえも
もう私たちのものでない

私たちは死ぬだろう
油くさい真っ黒な汚泥に浸かって
たっぷりの酸でのどと鼻を灼かれて
私たちを抱きとめる大地も海もなく
劇的な爆発も閃光もなく
死体が豊かな土壌に変わることもなく
ただ冷徹で無機的な化学変化のもとに
私たちの身体は変質してゆくだろう
破滅はぐずぐずとなし崩しに訪れるだろう
星への道は二度と私たちに還らないだろう

いっそその日が早くくればよい

願うことの罪深さを
罪深いとも思わぬままに
私たちは死ぬだろう



未完なので最初は未詩に登録しましたが、
批評禁止ではないので、
自由詩に登録を変更します。


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