蛇つかい来たる/吉岡ペペロ
カタヤマはなんの感想を言うこともなく夕方社長と帰っていった
送別会があると聞いていたが社長に急用ができたとのことだった
多分所長が急に用事が出来た、とか言って送別会が出来なくなったのだろう
所長がユキオにがんばれよ、と声を掛けた
はい、
ツジさんと力を合わせてな、
はい、
上田くん、ツジさん、これでさよならだけど、所長は顔を真っ赤にさせて泣いていた
営業所のまえでユキオとツジさんが所長を見送った
所長の車が角を曲がるのを見つめながらこの春の埃っぽい夕方の匂いに、ユキオは取り込まれたくないと思っていた
上田さん、がんばろう、
もちろんがんばるよ、半年で売上倍だからな、
三倍にしましょうよ、
ツジさんの色白な顔が白い蛇のように見えてユキオはいるはずもない蛇つかいをあたりに探した
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