蛇つかいのはじまり/吉岡ペペロ
った
常務はタバコをふかしていた
ユキオが口をすこしあけて息を吐くと電車が停車するような音がした
間延びしたなにかの準備をしようとするような音
上田さん、ぼくといっしょに高松に行きましょう、高松の売上を半年で倍にします、
カタヤマがニコリともせずにそう言った
上田くん、いやならいやと言っていいんだよ、ユキオを見ずに常務のイケダが言った
カタヤマがユキオを見つめていた
するとユキオの胸のなかで気づいてもいなかった蓋があいて言葉が出てきた
はい、分かりました、
ユキオが返事をすると社長がありがとうありがとう、と握手を求めてきた
カタヤマが爪をかんでうなずいていた
ユキオが息を吸うと電車の動き出すときのような音がした
高松まで電車に乗って行くのかな
ユキオは両の手を社長に包まれながらカタヤマを見やった
カタヤマがなんだか蛇つかいのように見えた
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