腕/番田
何もいらないのなら
捨ててしまえばいいと父は怒鳴り
母は何もとがめず聞き流した夜の高層住宅を
バラック小屋の生活が淡々と流れていた
暮らしをぼんやりと鳴らす
文字たちの凧に
風が無限に終演を繰りかえされる日を
せき止めていた妹がいて
埋め立てられた日の号令を
煙草に忘れ去ることのない通りを
地中に伏せたまま陰る太陽は
バナナの色したジーンズだった
鉛筆の中のスニーカーは
機械でふき取ることのできない土にまみれて
つねることを染みつけられたアルミニウムは
ミネラルウォーターにたわんで回っていく
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