錆びた三輪車は深いよどみの中へ走る/ホロウ・シカエルボク
いた
そして苦労して小さなバイバイをした
俺は振り返らずにそこを後にした
瓦礫を乗り越えると妙にうれしそうな年寄りがふらふらしながら立っていた
「ね、ね、あんた、ここで何してたの?」
と
妙に幼い口調でそいつは言った
俺は三輪車の方を振り向いた、子供はこちらに背中を向けて立っていたが
何かを感じてこちらへ振り向いた
年寄りが長く高い悲鳴を上げた
「ごめんなさい、ごめんなさいー!」
年寄りはそう言いながら地面に突っ伏して痙攣し始めた
俺は子供の方をもう一度見たが
その姿はどこにも見当たらなかった
年寄りに視線を戻すと仰向けになって泡を吹いていた
今にも死にそうに見えたが
突然目を見開いて立ち上がると
「僕が殺した!」と叫びながらよろよろと走り去った
俺はしばらく背中を見送ったが
暗くなる前に家に帰ろうと踵を返した
そこには子供がいた
俺と目が合うとにやりと笑った
早く帰らなければならない
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