廃園/未有花
 
うことはなかった

若い日のただ一度の恋は
今では遠い思い出となって私の胸に息づいている
あの頃の情熱はもうとうに枯れてしまったが
この身が朽ち果てたとしても忘れることはないだろう
あの燃えるような薔薇の花の下での接吻(くちづけ)だけは

この花園に眠る愛しい思い出よ
このまま私の胸の奥に深く深く埋めてしまおう
思い出はいつまでも美しいままのほうがいい
これから歩いて行くひとりきりの道に
ただ輝く宝石のように永遠に眠っているがいい

いつかまた出会えることを夢見ながら
いつかまた花咲けることを祈りながら
Adieu,mon amour
安らかに眠れ
そしてまた私も潔く朽ちて行こう
この寂しい廃園のように
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