廃園/未有花
朽ち果てた誰も訪れる者もいない廃園
寂れた石畳の道をひとり歩く
色褪せた花壇には花一輪すら咲いてはおらず
春を謳歌していた面影はどこにもなかった
かつてこの花園で一輪の花を摘んだことがあった
それはまだ若く美しい少年であった
その頬はうっすらと薔薇色に染まり
吸い込まれるような深い瞳は青スミレ
そして私を誘惑して止まない唇は桜草のようだった
あの日の燃えるような接吻(くちづけ)を私は忘れることができない
すがるような瞳で私をみつめていた
少女のような唇の美しい少年
一生に一度の恋であった
今でも消えることのない胸の奥の痛み
あれからあの少年とは二度と会うこ
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