いつかの路地/番田 
 
目黒駅から押し出されると
長い坂道を下り 目黒川を渡った
チケットの半券を握りしめた 僕は
汗まみれで 一言も口にしない花粉症だった

桜が咲くにはまだ 冷たすぎる
緑色の水面に チケットを確かめて過ぎると
どこに向かうのかすら 解答用紙で
ビルの間は廃墟になった学校がそびえていた

チケットはすでにくしゃくしゃだった
メモ用紙にしても使えなさそうだった 僕は
すでに 先生のことなど霞んで
すでに コンビニのおじさんの面影も覚えていない

路地裏を抜けていく 工場の跡地に
遠い日の曲がり角が浮かぶ
青白い顔色をした男が向かう場所は
あのビルのてっぺんなのだと 見つめていたっけ

戻る   Point(0)