椿の顔 /服部 剛
 
夕餉を終えた書斎にて、らんぷの明かり 
を一つ灯せば、壊れて永い眠りについた 
テレビ画面に映る頬のこけた自画像が、 
見知らぬ人の顔をする(地球という惑星
に来てから、もうどれ程の時間の川が、 
流れたろう・・)夜の静寂に響く、秒針 
の音。手をあてた胸に高鳴る、鼓動・・  

ぽとり、と床に落ちた紅い椿は顔を開い 
何か云いたげに 
て、こちらをじっと、視ている。 




戻る   Point(0)