推敲/草野春心
 


 ジャジーでブルージーでポップで
 アーバンな朝だ
 僕はリズミカルに食パンを齧り
 ナーヴァスな街の姿を夢想している



 小学校の門のそばには
 積み上げられた言葉の三メートル近い山
 本当のものはいつも黙っている
 風のように木の葉のように



 ニュートンとアインシュタインと伊能忠敬が
 膝を突き合わせ議論するそのそばで
 宇宙の輪郭は波のようにうねり
 混沌へ溶けてゆこうとしている



 何年も前に捨てた記憶は
 光ファイバーの網に巻かれて今朝舞い戻った
 善悪が絶え間なく裏返される時代に
 いつまでたってもリヴァーシブルなひとびとの思考



 コルクボードにピンで留めた
 九歳のテイタム・オニール
 ボール紙で出来た月にちょこんと座って……
 それに向かって詩を書き始めていたのに



 詩を推敲できても世界は推敲できない
 ひとの心を誰が動かしているのか
 絶望も希望もないけれど
 僕はそれだけのことを知りたい



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