できごと/番田
自分をなくしかけたような記憶の中
渡しかけて返されてしまったラブレターに反芻している
夜のすさんだ雨を降りしきる苦悩に立たっていた
そんな世界の中に忘れた彩りのような
ぼんやりとしたスモッグをかぎとろうとする香水のように
ブランドについてそのなりたちから話しつくせたならと
近づいてくる十字路でコンクリートを曲がれば
車たちは新しくなった色味を街並みに添えていて
水色な傘のコントラストなどは通行人の瞳にもう届かないのかも知れない
それらすべては決めつけられてしまったことなのだろう
吹き飛ぼうとしたパッケージの解き放っていくケーキに甘さを
あおいだ空の中につかもうとする
悩みなどなくしたこの肯定を
憂鬱の中へ捨て続ける夢の自由にして立っていた
世界中の忘れた今日を眠りに落ちていく
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