ノンフィクション 『回転すし屋にて。』/くろきた
が行ってしまった。
あっ、げそが来た! よし、
と、その瞬間彼と目が合う。
あ・・・(きゅん)
って、ときめいてる場合じゃない!
あーあ、げそ行っちゃったよ・・・
しょうがない、えんがわで手を打とう。
・・・やっと獲得したえんがわは、カラカラに干からびていた。
どうして、こんな、
すし屋に来てこんな目にあうのよっ!
てゆーか、なんでこんなロマンもへったくれもないような場所で彼と・・・
そう思いながらえんがわを口に入れた瞬間、
また彼と目が合った。
彼は笑っていた。
教室では見たことのない笑顔で、
私に笑いかけてくれた。
もぐもぐしながら、
口の中の干からびたえんがわが、
急においしくなった。
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