冬と光/木立 悟
水たまりに映るいさかいと雲を
雨がゆっくりとかきまぜる
人は過ぎる
空は過ぎる
水たまりの底のむらさきに
次の空がやってくる
鳴き声のように震える音が
どこからか冷たく
流れつづけるのをやめない
高いところからだけ見える
白く遠い街の上で
音と色とがかがやいている
鳥の影は飛び去って
川のまわりは風にあふれる
水の足あとを追いかける子
雪が歪みを消してゆく午後
光はひとり原を過ぎ
次の空への坂をのぼる
街のすべてのバス停をつないで
絵を描いていた雨と雪とが
出会うことなく過ぎていっても
光はひとり見つめつづけた
閉じかけた目をひらきながら
降り積もることなく降り来るものを
空と地のあいだに満ちるものを
触れては触れては消え去る応えを
光はひとり受けとりつづけた
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