お化けになりたい/殿岡秀秋
 

みんなの前から
お化けのように消えている間
胸は千切れるように痛かった

運動会の日に
校庭に椅子をもちだして
指示されたところに座る

先生の合図で立ち上がる
白線のところまでいって並ぶ
鼓動が早くなる
ぼくの走るときがついにきて
ピストルが鳴る

遅い
前からわかっている
ゴールしてから
旗をもつ生徒に先導されて
椅子のあるところまで戻る

リレー競争で
立ち上がってみんなが騒ぐ
ぼくは椅子に座ったまま
雲をながめる

姿があっても
誰にも見えないで
数えられることもなく
徒競走を走らないですむ
お化けになりたい

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