ある春のいちにち/吉岡ペペロ
 
人工的な空間に

とりのこされるような

ある春のいちにち

人工的な、というのは

花曇りの空もようと

コンクリートの

水を含んだ香りのことなんだが

ある春のいちにち

そんなところにとりのこされていた


恋人たちが妖精のようだ

ぼくだけが汚れている

おまえたちの失意や蹉跌に

ぼくが同苦していてやるから

それだけだ

ウソがないとしたらそれだけだ


ある春のいちにち

人工的な、というのは

花曇りの空もようと

コンクリートの

水を含んだ香りのことなんだが

ある春のいちにち

そんなところにとりのこされていた







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