夜行サイクリスト/大村 浩一
夜更けに
タンタンとタイヤを鳴らし
鉄の階段を降りて
僕の自転車が
外へと出掛けて行きます
(ほんとうは僕の自転車ではない
きみから借りたままのもの)
マウンテンバイクだから
走り出せば
ブロックタイヤのごうっというタイヤノイズと
チェーンの微かなきしみ
少しふらついて
まちがえてはいけません、
僕は乗っていないのです
いないのに
自転車だけが
しかもきみの居る北へではなく
なぜか西へと
金谷の薄暗い夜泣石のそばを通り
西口さんの居る浜松市街を左に逸れ
タンクローリーの横転した名阪国道を疾駆
神戸の混雑を抜けて加古川、姫路、岡山、あとはお
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