ヒ、リ/新宮栞
味を持たなくなる瞬間は、断続的に、
でも確実にあって、
その時は決まって、
わたしが生まれてから今までの記憶と、今から死ぬまでの未来
の想像を俯瞰する
わたしが見ていない、誰かが見た風景が、はっきりと見える。
わたしが聞いていない、誰かが聞いた音が、はっきりと聞こえる。
知らない誰かが愛し合う前の高揚や
愛し合った後のベッドの感触が、皮膚の内側で感じられ、てしまう。
(全然ヨクない)
探してもどこにもいないわたしが、どこかでわたしを見ている。
風景と人物の境目がない。
埋もれる。
すっげー埋もれる。
六十億人
一億二千万人
一千万人
わた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)