マロニエ通りを歩いた頃/瑠王
 
地に魅入られたタングは本当に一本の木になってしまった
太陽に嫌われてしまった君は、
君は、今では靴職人だと聞いた
通りから少し外れた小さな店で、
冬が来たらボルシチを飲もうと約束したのを覚えているだろうか

僕はと言えば、まだこの道を歩いている
ジェンベの音が聴こえた気がして不意に悲しくなったんだ
アーチはまるで石碑のように眠っていたよ
タングと名づけられた小さな木も

闇の中で窓がひとつだけ寂しそうに開いていた
だから少しだけ不安になって、ちょっと聞いてみたんだ
そしたらちゃんと返ってきたよ
どんな答えだったかは内緒
いつかの手紙にそっと、記しておくよ

ただ、これだけは言える
僕らの世界は散り散りになってしまったけど
あの通りのマロニエが、いつまでも
いつまでも忘れることはないだろう、と




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