マロニエ通りを歩いた頃/瑠王
 
坂の途中で電車を眺めたあの頃の独り
緩やかなカーブで、芳ばしい匂いのするwindsを過ぎて
ブランコのあるLEMONが見えてくる
手前の鞄屋のおばさんに声の要らない挨拶をして
少し早い時期に紅葉するマロニエと、呼応して色づく蔦の学舎
そしてアーチを抜ける際に響く靴の踵
錆びて開く度に船みたいな音を出す重い窓
暗い講堂の隅のアップライトのピアノ
創立者の霊が出ると云われた仮眠室
大きな壁と風変わりな建物に囲まれたビルの隙間の光庭で、
僕らは木洩れ日のように名乗りあった
影で生きた故に光を知っていた皆の誰もがあの庭で踊った
踊りにきたんだ

いつも何処かに音楽があって

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