どうして忘れてしまうのですか?/真島正人
に、
自由を行き過ぎたこと
なんて
なんて
あぁ
今は、
動けない荷物の中の、
一つの怒れる小道具のように
Aは、箱の中で打ち震える
こんなはずではなかったのだと
箱はやがて解かれるだろう
Aは再び
世界のあるがままの空気を吸い込む
けれども、Aは、不在が長すぎた
だからAには
ちゃんと認識できない
世界のありようと、
世界の空気の流れ方、
その中でどのように呼吸をすればよいのかを
誤って
天使のような呼吸をして
散りゆく銀杏に怯え
自分だけの平穏な色を探すことに血眼になる
幾度も映画館の座席で座りなおして
落ち着くふりをする
そして彼は知っている
恐ろしいことに
まだ、
全ては生きている
彼を自由から追放した
あの怖い鎖が
生き物になってここに居る
彼を、監視して
彼の荷物を引っ張っている
もやもやとした
別の姿に化けて。
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