木から/15フィールズ
随分と昔から庭にある木から
一つの果実が
ぽとり、
と落ちた
花開く予感だけを残して
、
動かない現実と
絶え間無く流動する時間の中
そのどちらでもないところに
かつての果実は落ちていった
この夏に誇った鮮やかな色と
道行く人の誰もが立ち止まったあの熟れた香りは
全て消え失せた
今はところどころが陰鬱に変色し
方向性を見誤った甘い香りが
屍を好む者達を引き寄せて
その屍肉を喰らわせた
僕もいずれは捕まってしまう
、
やがて短かった秋が終わり
僕達は冬を迎える
そうして空からゆっくりとつぎはぎの雪が降り積もり
地に堕ちた全てが埋もれ
花の最期を彩るだろう
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