コブの無いひと/恋月 ぴの
 
か悩み続ける私がいて

孫の顔早くみたいとせがむ言葉煩わしくもあり

コブの無い駱駝は馬に過ぎないなんて歌が好きだったあの人は
駱駝の吐き飛ばす唾が臭いの知っていたのだろうか

そしてこれ以上は迷惑かけられないからと
私のもとを去っていった身勝手さ
ハンガーにかかったままの黒いコートを片付けられず

ひょこっと帰ってくるんじゃないかと淡い期待で
ひとり寝の寂しさを紛らわし
これってまさに演歌の世界ねと自嘲しながらも酔いしれたっけ

梅の便り聞く頃には実家へ戻ってみようかと按配しながら
オリンピックでもとテレビをつければ
パンツ下げたお兄さん達がハーフパイプに挑んでいて

アナウンサーがマックツィスト!と叫ぶ度に
ピクルスを摘んでのけてた優男の指先こころ掻き乱す



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