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佐藤真夏
電池の切れかかった壁時計のなかで
だいだい色の秒針が痙攣している頃
安部公房は女に砂をかけている
(カチ)、
(カチ)、
はだかで
荒野にいました
髪の毛ばかり食べるうさぎみたいに
おなかにたまった 異物 を
吐き出せずにいました
(カチ)、
砂の女が
翅のない男と偶然を越える頃
わたしの
指先にほんの少し花
の匂い
もうすぐ
たぶん根が生える
(カチ)、
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