既思感-デジャ・ビュ-/愛心
この道の果てに 気づいてしまったのはいつだっただろう
笑顔で交わした 約束を誓った入り口は
もう遠い もう見えない
握った手のひらが貴方は固く 広くなって
見下ろしていたその黒髪も
今は空に翳されて 茶色に光る
同じ模様のマグカップ サイズの違うペアリング
貴方を示すものは こんなにも手元にあるのに
貴方という存在だけが
ここにいない 隣にいない
『愛してる』
何度も言ったこの言葉が
今では何故 空に溶けて消える
『傍にいたい』
本当の気持ちは 眦(まなじり)から 融けてこぼれ落ちる
嘘吐きなこの体は
今でもその温もりを 覚えている
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