彼岸花/斗宿
 
人間を止めたい日には
零れそうで零れない
流れない涙に黙祷を捧げる

風にゆれる彼岸の花を見ながら
遠い彼の地の人々を思い出す


無償の愛に包まれ生まれ
無償の愛に育まれた

ああ、この人だと
出逢った人々を愛し
出逢った人々に愛された

そう
愛することも、されることも
とうに知っているはずなのだ
幸せという言葉の意味を
感じとったその日から

それでも
疑いはどこから生まれるのか?
憎しみはどこで育つのか?

愛を
己を
人間を
疑い憎む
この心


紅の花びらが
一片(ひとひら)一片(ひとひら)散りながら
逝く
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