ルーム/マッドビースト
六畳の部屋には僕がいた
君がいた
ソファーもベッドもない部屋に
僕らは日がな一日そこにいた
そんな日がよく在った
雲が空を覆う夜には
僕は君の瞳に電灯の光を集めて月を見た
雨が外を満たす朝には
僕は君の胸に耳をあて太陽の鼓動を聴いた
体を持て余す退屈な昼には
僕は二つの丘の間に遊んだ
部屋の中にも雨は降った
僕の指は何度も君の涙を拭った
光が恋しくなれば
僕は詩をよみ君の笑顔を求めた
君の声は唄だった
君の唇は渇きをいやした
六畳の部屋には僕がいた
君がいた
世界があった
全てがあった
君がいた
僕はここに全てを見つけた
それでも
君はここになにを見ただろう
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