憂い/木屋 亞万
むには短すぎる
私が捉えた風景はどれも静かに止まったままで
目を閉じたまま泥のように眠っている
枝は外側に開くように曲がりながら伸びていく
日々太くなっていく幹から離れたがっているのだ
やがて枝先は幹とのつながりを毛嫌いするように
ぱらりぱらりと葉もろともに落ちていく
妹は小さな実を残していなくなってしまっていた
実は種となり
種はそぼろのような土の中へと
消えた
やがて芽が出る、と兄は思っていたが
妹の種が芽吹くことはなかった
兄は泣く機会を逃し続け
すこしずつ生きる気力を失っていった
誰かのために生きるということは
あまりに脆く
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