憂い/木屋 亞万
私のからだの過半数が私に死を命じている
花が春に咲くために
陽気さを私から奪っているのだ
真に美しいものを腹の底から渇望する
出来合いのものはもう冷めていて
油は白く固まってしまっている
自分で作らなければならない
と、筆をとる
茎が生えてくる
そぼろのような大地から
兄弟のように二本
長い方が兄だ
未熟なほうは妹であろう
女の方が先に花を咲かせるのは
もはや世の常と言っていい
兄は葉を繁らせて兄弟を養うのみだ
私の筆は音を描けない
纏まった毛先は歌うことを知らず
年頃の女のように枝毛ばかりを気にしている
私の指先は映像を掴むに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)